FGMの縫合は何のため?目的と世界の実態を解説

女性器を切除・損傷するFGM(女性性器切除)には、外見上の変化だけでなく、膣の入口を狭くする「タイプ3(インフィビュレーション)」と呼ばれる形態があります。なぜ、そこまで身体を変える必要があるのでしょうか。また、FGMはアフリカだけの慣習なのでしょうか。この記事では、縫合が行われてきた社会的な理由、医学的な意味、宗教との関係、アフリカ以外での実態まで、現在の国際的な知見に基づいて整理します。

FGMとは?4つのタイプに分けられる

FGMとは、医学的な必要性がないにもかかわらず、女性の外性器を部分的または完全に切除したり、傷つけたりする慣習の総称です。WHOはFGMを4つの主要なタイプに分類しています。

タイプ1は、陰核亀頭や包皮の一部または全部を切除するものです。

タイプ2では、陰核亀頭と小陰唇の一部または全部などが切除されます。

そして、今回の疑問に直接関係するのがタイプ3です。これは「インフィビュレーション」と呼ばれ、外陰部の組織を切除・移動させて、膣口を狭くし、覆いを形成する形態です。縫合が伴う場合もあります。

タイプ4には、医学的理由のない穿刺、切開、焼灼など、その他の有害な処置が含まれます。

つまり「FGM=すべて縫合」というわけではありません。縫合によって膣口を狭くするインフィビュレーションは、FGMの中でも特に重い形態として位置づけられています。

なぜ膣の入口を狭くするの?目的は貞操の管理だった

では、なぜこのような処置が行われてきたのでしょうか。

最大のポイントは、医学的な目的ではなく、女性の性行動を社会的に管理するという考え方です。

WHOによると、FGMが行われる理由には、結婚前の処女性を守ること、結婚後の貞節を確保すること、女性の性的欲求を抑えることなどが含まれています。特にタイプ3では、膣口が狭くなることによって性交への心理的・身体的な障壁を作り、婚外性交や婚前性交を抑止できると考えられてきました。

ここで重要なのは、これらが医学的に証明された効果ではないという点です。

「女性の性欲を抑えれば貞淑になる」「身体を閉じれば浮気を防げる」といった考え方は、社会や家族が女性の性的行動を管理するために形成された文化的な信念です。

さらに、結婚相手となる男性側やその家族が、FGMを受けた女性を「結婚に適している」と考える社会では、本人だけでなく家族にも強い圧力がかかります。

そのためFGMは、単純に「女性が自分から望んで行う習慣」と考えるだけでは実態を説明できません。

「初夜のために縫合する」という話は本当?

インフィビュレーションについては、結婚まで性交を防ぎ、結婚時に開くという説明がされることがあります。

実際、WHOもタイプ3では、狭く閉じられた状態を後に開く「デインフィビュレーション」が必要になる場合があり、性交や出産を可能にするために医療的処置が必要になることを説明しています。

ただし、「初夜に夫が開封して処女を確認する」という具体的な慣習が、FGMを行うすべての地域に共通しているわけではありません。

地域によって制度、家族構造、結婚観、宗教観は大きく異なります。

したがって、

「FGMの縫合=必ず初夜のため」

と一般化するのは正確ではありません。

より正確には、婚前の処女性や婚姻後の貞節を重視する社会規範の中で、女性の性的行動を制限する手段の一つとしてタイプ3が維持されてきた地域がある、と理解するのが適切です。

FGMは宗教が原因なの?実は単純ではない

FGMについて語るとき、イスラム教など特定の宗教だけが原因だと説明されることがあります。

しかし、これはかなり単純化された説明です。

WHOは、FGMを明確に規定する宗教上の聖典はないとしています。一方で、実施地域の一部では「宗教的に必要なもの」と信じられてきました。また、宗教指導者の立場も地域によって異なります。

つまり、

宗教そのものがFGMを一律に命じているわけではないが、宗教的な正当化が慣習を維持する要因になった地域はある

というのが実態に近いでしょう。

さらに重要なのが「伝統」です。

母親や祖母の世代も受けてきたから娘にも受けさせる。

周囲の家庭がみな行っているから、自分の娘だけ行わないと結婚相手が見つからない。

このような社会的圧力が、FGMを世代から世代へ継承する大きな要因になります。WHOも、社会規範への同調圧力や、結婚・成人への準備と考えることを主要な要因として挙げています。

FGMはアフリカだけ?中東・アジアにも存在する

FGMというとアフリカの問題という印象が強いかもしれません。

しかし、アフリカだけではありません。

WHOによれば、FGMはアフリカの西部・東部・北東部を中心に、中東やアジアの一部でも行われています。さらに、移民コミュニティなどを通じて、実施地域以外にも存在します。

2025年のWHO資料では、FGMを経験した女性と少女は、実態を把握できる国々だけでも2億3,000万人を超え、年間400万人以上の少女が受けるリスクがあると推計されています。

UNICEFの2024年の分析では、確認されている2億3,000万人超のうち、アフリカが約1億4,400万人、アジアが8,000万人超、中東が600万人超とされています。つまり、人数で見ればアフリカが最大ですが、「FGMはアフリカだけの問題」という理解は明確に誤りです。

なお、国別の最新データは調査年が異なるため、単純な国別ランキングだけで世界全体の状況を判断することには注意が必要です。UNICEFは2026年にも31か国について最新の国別統計プロファイルを更新しています。

FGMに医学的なメリットはある?健康への影響とは

結論からいえば、医学的なメリットは確認されていません。

WHOは、FGMには健康上の利益がなく、正常な身体組織を損傷することで、さまざまな健康被害を引き起こすとしています。

短期的には、強い痛み、出血、感染症、排尿障害などが起こる可能性があります。

長期的には、尿路感染症、月経に関する問題、瘢痕、性交時の痛みなどが生じる場合があります。また、出産時の合併症や新生児へのリスクとの関連も報告されています。心理面では、不安、抑うつ、PTSDなどとの関連も指摘されています。

特にタイプ3では、狭くなった部分を後から開く「デインフィビュレーション」が必要になる場合があります。これは性交や出産を可能にするために行われる医療的処置です。出産後に再び閉じる「再縫合(reinfibulation)」について、WHOは健康上のリスクがあるとして推奨していません。

したがって、FGMは「昔の医療技術」ではなく、医学的必要性のない社会的慣習が身体に重大な影響を与える問題として理解する必要があります。

まとめ

FGMの中でも、膣口を狭くして覆いを形成するタイプ3は、インフィビュレーションと呼ばれます。

その背景には、単純な一つの理由ではなく、処女性・貞節の重視、女性の性行動の管理、結婚相手を得るための社会的規範、家族の名誉、伝統、宗教的な正当化など、複数の要因が絡んでいます。

重要なのは、これらが医学的な効果によって成立したものではないということです。

また、FGMはアフリカだけに存在するものでもありません。中東やアジアの一部にも確認されており、移民コミュニティを通じて世界各地にも存在します。

現在の国際的な医学・人権の立場では、FGMには健康上の利益がなく、女性と少女の身体的・精神的な健康や自己決定権を損なう有害な慣習とされています。

FAQ

Q1. FGMのタイプ3は必ず縫合するのですか?
必ずではありません。タイプ3は膣口を狭くして覆いを形成することが特徴で、その方法には組織の切除や再配置などが含まれます。縫合が伴う場合もあります。

Q2. FGMはイスラム教の決まりですか?
一律にそうとはいえません。WHOは、FGMを規定する宗教上の聖典はないとしています。ただし、実施地域の一部では宗教的な慣習として正当化されてきました。

Q3. FGMはアフリカだけで行われていますか?
いいえ。中東やアジアの一部にも存在します。さらに、移民コミュニティなどを通じて、伝統的な実施地域以外にも確認されています。

Q4. FGMを受けると健康上のメリットがありますか?
WHOは健康上のメリットを認めていません。出血、感染症、排尿・月経の問題、性交時の痛み、出産時の合併症など、短期・長期の健康被害が生じる可能性があります。

Q5. 現在もFGMを受ける少女は多いのですか?
はい。WHOは、FGMを受けるリスクがある少女が毎年400万人以上いると推計しています。世界では廃止に向けた取り組みが進んでいますが、人口増加などもあり、依然として大きな国際的課題です。

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