売春する側には罰金や実刑があるのか、買う側にはなぜ罰則がないのか。売春防止法の条文をもとに、現在のルールを分かりやすく整理します。
結論
- 売春そのものをした本人を直接処罰する一般的な規定はありません。
- 売春目的の勧誘・客待ち・誘引などは、6か月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金です。
- 売春の周旋や場所の提供など、第三者が関与すると罰則は重くなります。
- 売春防止法3条は売春とその相手方を禁止していますが、単純に買ったこと自体を処罰する罰則は置かれていません。
- 現在は「懲役」ではなく「拘禁刑」という名称が使われています。
FAQ
① 注目ポイント・注意点
「売春をした=直ちに罰金」という法律ではありません。処罰の中心は、勧誘や客待ち、周旋、場所の提供など、売春を助長する行為です。
② 重点の内容
特に重要なのは売春防止法5条です。売春目的で公衆の面前で勧誘したり、客待ちをしたり、広告などで客を誘引した場合、6か月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金が定められています。
③ どんな読者におすすめか
「売る側にはどんな刑罰があるのか」「罰金だけなのか、刑務所に入ることもあるのか」「なぜ買う側には罰則がないのか」を正確に知りたい人におすすめです。
売春防止法の罰則と「売る側・買う側」の違い
売春した本人に直接「売春罪」があるわけではない
まず押さえておきたいのが、売春防止法の構造です。
同法2条では、売春を「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義しています。そして3条では「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない」と定めています。
ところが、3条違反そのものについて、単純な売春や買春を直接処罰する罰則は設けられていません。
そのため、
「お金を受け取って、不特定の相手と性交した」
という事実だけをもって、売春をした本人に直ちに「○万円の罰金」や「○年の拘禁刑」が科される、という仕組みではありません。
ここは「売春は禁止されているのだから、売った本人にも当然罰則がある」と考えると誤解しやすい部分です。
法務省も、売春防止法について、売買春そのものを処罰する規定を含まない形で成立した法律であると説明しています。
勧誘・客待ちをすると「6か月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金」
では、売春する側が処罰されるのはどんな場合でしょうか。
代表的なのが5条の「勧誘等」です。
売春をする目的で、
- 公衆の目に触れる方法で相手を勧誘する
- 道路などで人の身辺に立ちふさがったり、つきまとったりする
- 公衆の目に触れる方法で客待ちをする
- 広告などで相手を誘引する
といった行為をすると、6か月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金の対象になります。
つまり、ニュースなどで「売春防止法違反で逮捕」と報じられるケースでも、何が違反行為だったのかを確認することが重要です。
単純な「売春行為そのもの」ではなく、5条に定められた勧誘・客待ちなどが問題になっている場合があります。
なお、2025年6月1日から、刑法上の「懲役」「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されています。そのため、現在の売春防止法の条文も「6か月以下の拘禁刑」のような表現になっています。
周旋・場所の提供などはさらに重い罰則がある
売春に第三者が関わると、罰則は大きく変わります。
たとえば、売春の周旋をした場合は、6条により2年以下の拘禁刑または5万円以下の罰金です。
さらに、人をだましたり困惑させたり、親族関係による影響力を利用して売春をさせた場合は、7条により3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金となります。
暴行や脅迫によって売春をさせた場合も処罰対象です。さらに、こうした行為をしたうえで売春の対償を受け取ったり、要求・約束した場合には、8条により5年以下の拘禁刑および20万円以下の罰金となる場合があります。
場所を提供する行為についても罰則があります。情を知って売春を行う場所を提供した場合は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金、これを業として行った場合は7年以下の拘禁刑および30万円以下の罰金です。
さらに、人を自分の管理する場所などに居住させて売春をさせることを業とした場合は、10年以下の拘禁刑および30万円以下の罰金と、より重い刑が定められています。
このように、売春防止法は「売る人だけを罰する法律」というより、売春を助長したり、他人を売春させたり、周旋・場所提供などによって利益を得たりする行為を段階的に処罰する法律と理解したほうが正確です。
そして、最初の疑問だった「買う側にはなぜ罰則がないのか」という問題につながります。
売春防止法3条は、売春をすることだけでなく「その相手方となること」も禁止しています。しかし、現在の売春防止法には、成人同士の単純な買春行為そのものについて、3条違反として直接処罰する規定はありません。
そのため、「禁止されていること」と「刑罰が科されること」は同じではないという点が、この法律を理解するうえで非常に重要です。
なお、児童買春などについては別の法律による処罰が問題になるため、「買う側はどんな場合でも処罰されない」という意味ではありません。対象者の年齢や行為の内容によって、別の犯罪が成立する可能性があります。
まとめ
売春防止法では、売春そのものをした本人を一律に処罰する「売春罪」が設けられているわけではありません。一方、売春目的の勧誘・客待ち・広告などには6か月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金が定められています。
また、周旋、場所の提供、売春をさせる業など、第三者による助長行為には、さらに重い刑罰が設定されています。
したがって、「売る側は罰せられるのに買う側は罰せられない」という説明だけでは不十分です。正確には、売春そのものを禁止しながら、刑罰の対象を勧誘・周旋・場所提供などの助長行為に重点的に置いているのが現在の売春防止法の特徴です。
