「電力会社は電気を4割も無駄にしている」
そんな話を、ネットやSNSで見かけたことはありませんか。
一方で、公式発表では送電ロスは5%前後とされています。
この大きなギャップは、単なる嘘なのか、それとも数字の見方の違いなのか。
本記事では、
- 「送電ロス4割説」はどこから生まれたのか
- 公的データでは何が事実なのか
- なぜ多くの人が誤解してしまうのか
を、一次情報ベースでわかりやすく解説します。
電力会社の送電ロスは本当に4割なのか?
Contents
結論:日本の「送電ロス4割」は事実ではない
結論から言うと、
日本の電力会社において「送電ロスが4割以上」という公式データは存在しません。
公的機関・電力会社・国際統計のいずれを見ても、日本の送配電ロスは約4〜5%前後です。
では、なぜ「4割以上失われている」という話が出てくるのでしょうか。
公式データが示す「送配電ロス」の実態
日本の送配電ロス率
- 日本の送配電ロス:約 4〜5%
- 世界的に見てもトップクラスの低水準
- 新興国では10%以上の国も珍しくない
これは、
- 超高圧送電
- 設備の高密度化
- 老朽設備の継続更新
といったインフラ投資の結果です。
「1割未満」という数字は事実であり、過小評価ではありません。
「4割以上のロス」という数字の正体
原因は「送電ロス」と「発電ロス」の混同
ネット上で語られる「4割以上のロス」は、ほぼ例外なく
送電ロスではなく、発電段階でのエネルギー損失を含めた話です。
火力発電の仕組み
- 燃料の熱エネルギー → 電気に変換
- 最新鋭設備でも効率は約 60%前後
- つまり 約40%は熱として失われる
この「発電ロス」を、
電力会社が送電で無駄にしている
と誤解してしまうケースが非常に多いのです。
エネルギー全体で見ると「4割以上失われる」は事実
整理すると、こうなります。
- 燃料エネルギーを100とする
- 発電時に約40〜60%が失われる
- 残った電気の約5%が送配電で失われる
結果として、
エネルギー全体のロスは40〜60%
これは事実です。
ただしこれは送電ロスではありません。
なぜ誤情報が広まりやすいのか
- 用語の違い(送電・送配電・発電)
- 数字の切り取り
- 「電力会社は隠している」という陰謀論的文脈
- 海外(インフラ未整備国)のデータの誤用
特にSNSや個人ブログでは、
「発電ロス」+「送電ロス」+「制度批判」
が一括りにされがちです。
世界では本当に40%超の事例はあるのか?
あります。ただし条件付きです。
- 途上国や紛争地域
- 盗電・未収・計量不備を含めた
AT&Cロス(技術+商業損失) - 国単位ではなく、特定地域・事業者レベル
日本や先進国の電力インフラとは、前提条件がまったく異なります。
まとめ|数字の「意味」を見誤らないことが重要
- ❌ 日本の送電ロスが4割以上 → 誤り
- ⭕ 送配電ロスは約5% → 事実
- ⭕ エネルギー全体では4割以上失われる → 事実
- ❗ 発電ロスと送電ロスは別物
「どの段階のロスを指しているのか」
ここを切り分けるだけで、電力問題の見え方は大きく変わります。