以下は、現代の学術的見地から見た「人種」の分類に関する整理です。
歴史的な人種分類の概要
• リンネ(Linnaeus, 1735)
『Systema Naturae』において、人類を以下の4つの「人種」に分類しました:
• Homo europaeus(ヨーロッパ人)
• Homo afer(サハラ以南のアフリカ人)
• Homo asiaticus(アジア人)
• Homo americanus(アメリカ先住民)
• ブルーメンバッハ(Blumenbach, 1795)
5つの「変種(varieties)」として分類:
• コーカソイド(Caucasian/白人)
• モンゴロイド(Mongolian/黄色人種)
• エチオピアイド(Ethiopian/黒人)
• アメリカン(American/赤人種)
• マラヤン(Malayan/褐色人種)
• 20世紀初頭の3大分類
• コーカソイド(Caucasoid)
• モンゴロイド(Mongoloid)
• ネグロイド(Negroid)
これらはヨーロッパ、東アジア、サハラ以南アフリカを代表する分類とされましたが、多くの地域や民族が分類から漏れていたため、批判を受けました
• ヨーロッパ内部の細分化
1920〜30年代には、ヨーロッパ人をノルディック、アルパイン、地中海型などに細分する分類も登場しました
• その他の分類例
• オーストラロ・メラネシアン(Australo-Melanesian)
• イラノ・アフガン人種(Irano-Afghan race)
• アラビッド人種(Arabid race)
• チェカノフスキによるヨーロッパ内の純人種と混合型の分類
現代の学術的見解:人種は生物学的実体ではない
• 遺伝的多様性の観点から
リチャード・ルーウォンティン(Lewontin, 1972)は、人間の遺伝的変異のうち、約6%が「人種間の差異」に起因し、残りは「人種内の差異」であることを示しました。これは、人種による分類が生物学的に意味を持たないことを示唆しています
• 現代の人類学・生物学のコンセンサス
• アメリカ生物人類学会(AAPA)は、「人種を自然な生物学的側面として捉えることは誤りであり、有害である」と明言しています
• アラン・テンプルトン(Templeton, 2016)も、「人間に人種は存在しない」と断言しています (
• 「人種」ではなく「集団(population)」や「系統(ancestry)」の使用へ
現代の遺伝学や医学研究では、「人種(race)」という用語は避けられ、「集団」や「系統(ancestry)」という表現が推奨されています
まとめ:現代の学術的立場
• 歴史的には「白人・黒人・黄色人種」などの分類が存在したが、これは社会的・文化的構築に過ぎず、科学的根拠は薄い。
• 現代の遺伝学・人類学では、人種による生物学的区分は否定されており、むしろ人間の遺伝的多様性は個人間において大きく、集団間の差異は小さいとされています。
• そのため、学術的には「人種」という概念はほぼ廃止され、「集団」や「系統」に基づく分析が主流です。
特定の地域や民族に関する「系統」や「集団」の研究
