不正入国(不法入国)の犯罪性とその議論の背景不正入国(出入国管理及び難民認定法違反による不法入国)は、日本法上、明確に犯罪行為です。具体的には、入管法第5条で上陸拒否事由に該当する場合の入国や、偽造文書を使った入国などが禁止されており、罰則として3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます(同法第70条)。これは行政法上の違反を超え、刑事罰の対象となる点で、単なる「滞在超過」とは異なります。摘発されれば、即時退去強制の対象となり、5〜10年の上陸拒否期間が課されるのが一般的です。 しかし、あなたがおっしゃるように、この「明確な犯罪」に対して「なぜ理解不能な議論が起きるのか」という点は、社会・政治的な文脈で複雑化しています。以下に、主な理由を整理します。なぜ議論が起きるのか:主な要因不法入国を「犯罪」と一刀両断する声(厳格な取り締まり派)と、人道的・経済的側面を考慮する声(柔軟対応派)の対立が、議論の火種となっています。主な背景は以下の通りです:
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要因
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詳細説明
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代表的な主張・事例
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人権・難民保護の観点
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不法入国者の多くは、母国での迫害(政治的・人種的)から逃れる難民申請者を含む。日本は難民認定率が極めて低い(2023年時点で約1%)ため、申請中の滞在が「不法」扱いされやすく、二重処罰(在留資格喪失+送還)として人権侵害との批判が出る。
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人権団体(例: 移住連)は「非正規滞在は法制度の不備が原因」と主張。1980-90年代の不法労働者が人手不足を支えた歴史を挙げ、「犯罪者扱いは制度責任を回避する」と指摘。
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不起訴・不起訴率の高さの印象
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外国人犯罪全体の起訴率は日本人より高い(法務省犯罪白書: 外国人約70%、日本人約60%)が、入管法違反(不法入国関連)は不起訴が多い印象がSNSで拡散。実際は検察の裁量(嫌疑不十分や情状酌量)によるが、言語・文化の壁で証拠収集が難しく、送還優先で刑事不起訴になるケースあり。
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2025年の事例(埼玉・川口でのトルコ人関連)で「不起訴続き」との報道が相次ぎ、司法の「外国人優遇」論を呼ぶ。一方、統計上は外国人犯罪率自体が日本人と大差なく(約0.3% vs 0.2%)、全体犯罪減少傾向の中での偏見が議論を過熱。
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経済・労働力の現実
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不法入国者は低賃金労働(建設・農業)を支えるが、摘発強化で人手不足が悪化。政府の「不法滞在者半減計画」(2004〜)が功を奏し、不法滞在者はピークの30万人から2020年約8万人に減少したが、コロナ禍で再増加。
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警察庁白書では「不法滞在が犯罪の温床」と警告。一方、企業側は「違法雇用を黙認してきた政府の責任」と反論。外国人犯罪は全体の1割未満で、治安悪化の主因ではないとのデータあり。
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メディア・SNSの影響
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テレビやネットで「外国人犯罪増加」が強調され、偏見を助長。実際の統計(警察庁: 2024年外国人検挙15,541件、ピーク比64%減)では全体犯罪減少だが、個別事件(例: 中国人不起訴ケース)が炎上。
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2025年参院選で「外国人不起訴だらけ」の誤情報が拡散。法務省データで否定されるが、保守派の「司法不信」論が根強い。
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これらの議論は、単なる「犯罪か否か」ではなく、日本の高齢化社会での移民政策全体(受け入れ拡大 vs 厳格管理)の対立を反映しています。厳格派は「法の遵守」を、柔軟派は「多文化共生と経済貢献」を強調し、理解不能に見えるのは両者の視点差が大きいためです。実際、犯罪白書でも「外国人犯罪は国際化の副産物」と位置づけ、偏見の払拭を促しています。本国送還(退去強制)の経費について不法入国・不法滞在者の送還費用は、原則として本人負担(自費出国)です。航空券・護送員人件費・施設使用料などで、1人あたり**数十万円(20〜50万円程度)**かかると推定されます。 しかし、経済的に払えない場合や送還拒否(暴行・抵抗)時は、国が負担せざるを得ず、チャーター機使用で高額化します。具体例:
- 単独送還: 航空券代金+護送員1〜2名の人件費で、約30〜40万円。
- 集団送還(チャーター機): 2013年のフィリピン人75人送還で約3,000万円(1人約40万円)。8年間の総額で2億円超(平均1フライト数千万円)。
- 2025年トルコ人(クルド人含む)対象: 補正予算で護送費8,300万円(対象1,098人、1人約7.5万円だが集団対応で変動)。
これらは目安で、距離・抵抗度・人数により変動。払えない場合、入管施設収容が続き、最終的に国負担となります。費用は日本人の税金か?はい、国負担分は主に日本人の税金(一般会計)から支出されます。法務省の出入国在留管理庁予算(2025年度約500億円)の一部で、所得税・法人税などの税収が財源。 本人負担が原則ですが、拒否・貧困時は公金使用となり、納税者負担の批判(例: 「雇用主や出身国が負担すべき」)が強いです。 2025年のクルド人関連予算のように、補正予算で追加計上されるケースも税金由来です。この問題は、移民政策の抜本改革(難民認定緩和や雇用規制強化)で解決の糸口が見えるかもしれません。ご質問のフラストレーション、よくわかります。追加の詳細が必要ならお知らせください。
