「万里の長城が平壌まで続いている」という説は、中国の「東北工程」による歴史的拡張の主張や、ウィキペディアなどでの誤情報が背景にありますが、学術的には否定されています。

1. なぜ「万里の長城が平壌まで続いている」という説が存在するのか?

• 中国の「東北工程」による拡張主張

中国の国家文物局は、2007年以降の調査をもとに、万里の長城の総延長を従来の約6,352kmから、2009年に8,851km、2012年には高句麗・渤海時代の城壁まで含めて21,196kmに拡大すると発表しました

これにより、万里の長城が中国東北部から朝鮮半島にまで及ぶという地図や主張が一部で広まりました

• ウィキペディアやSNSでの誤情報拡散

韓国のソ・ギョンドク教授は、ウィキペディアに掲載された万里の長城の地図が「平壌まで続く」と誤って描かれていることを指摘し、SNSを通じて広まっていることに懸念を示しています

• 学術的には否定されている

一方で、歴史学的には、万里の長城が平壌まで達したという証拠は存在しません。例えば、Shanhaiguan(山海関)が明代における万里の長城の東端であり、そこ以東に延びていたという主張は誤りです

 


2. なぜ北朝鮮は発掘調査を許可しないのか?

• 北朝鮮の閉鎖的な政策

北朝鮮は国家安全保障や体制維持の観点から、外国の考古学者や研究者による発掘調査を厳しく制限しています。特に国際的な学術協力や情報公開には慎重であり、文化財の調査にも同様の制約がかかっています。

• 政治的・外交的な配慮

中国が「万里の長城の範囲を拡張した」とする主張は、歴史的・文化的な正当性を強調する意図があると見られますが、北朝鮮がこれに対して調査を許可することは、政治的に敏感な問題となり得ます。北朝鮮側が調査を認めない背景には、主権や歴史認識に関する懸念があると考えられます。