耳鳴りは「原因が分かっていない」わけではなく、複数の要因が絡み合って発症・悪化することが多いため、個々の状況に応じた総合的な評価と対策が重要です。耳鳴り(ティンナイタス、tinnitus)の原因について、の情報をもとに詳しくご説明します。

耳鳴りの原因は解明されているのか?

 

耳鳴りの正確なメカニズムは完全には解明されていませんが、多くの研究により、以下のような原因や誘因が明らかになっています。

 

1. 難聴に伴う耳鳴り(主な原因)

• 内耳の有毛細胞が加齢や騒音によって損傷すると、脳が音の入力不足を補おうとして異常な電気信号を発生させ、耳鳴りが生じると考えられています

• 実際、耳鳴りを訴える人の約90%に難聴が認められるという報告もあります

 

2. 耳や頭部の構造的・血管的要因

• 耳垢の蓄積や中耳炎などによる耳道の閉塞、頭部・首の外傷、耳管の機能不全などが耳鳴りを引き起こすことがあります

• 脈拍に同期して聞こえる「脈動性耳鳴り」は、動静脈瘻や動脈硬化、高血圧などの血管異常が原因となることがあります

 

3. 薬剤の副作用(耳毒性)

• NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、一部の抗生物質、抗がん剤、利尿剤、抗うつ薬などが耳鳴りを引き起こすことがあります。多くの場合、薬の中止で改善することもあります

 

4. その他の疾患や身体的要因

• メニエール病、顎関節症(TMJ)、耳の骨の異常(otosclerosis)、聴神経腫瘍(アコースティック・ニューローマ)などが耳鳴りの原因となることがあります

• 自己免疫疾患(例:ループス、関節リウマチ)、貧血、甲状腺疾患、糖尿病などの全身疾患も関連することがあります

 

5. ストレス・生活習慣・精神的要因

• ストレスや不安、睡眠不足、過労などが耳鳴りを悪化させることが知られています

• 喫煙や過度のアルコール摂取、高脂肪・高塩分・高カフェインの食生活も血流や内耳の環境に影響し、耳鳴りを誘発・悪化させる可能性があります

 

6. その他の稀な原因

• 筋肉の無意識の痙攣(ミオクローヌス)が「カチカチ」「ポコポコ」といった音を引き起こすことがあります

• アレルギーによる耳管の機能障害や耳の炎症も耳鳴りの一因となることがあります

 


最新の研究動向(2025年)

• 睡眠と耳鳴りの関係

2025年3月の研究では、昼寝後に耳鳴りが増幅する傾向があり、これは睡眠時のいびきや睡眠時無呼吸が関与している可能性が示唆されています

• 栄養と耳鳴りの予防

2024年の研究によると、週に2回以上の魚の摂取(特にマグロ、タラ、ハリバット、貝類)は耳鳴りのリスクを約25%低減する可能性がある一方、サーモンやマグロ油はリスクを増加させる可能性があると報告されています

 


まとめ

 

耳鳴りの原因は多岐にわたり、以下のように分類できます:

• 難聴(加齢性・騒音性など)

• 耳や血管の構造的異常

• 薬剤の副作用

• 全身疾患(自己免疫、代謝異常など)

• ストレス・生活習慣

• 睡眠障害や栄養状態

 

耳鳴りは「原因が分かっていない」わけではなく、複数の要因が絡み合って発症・悪化することが多いため、個々の状況に応じた総合的な評価と対策が重要です。

 


気になる症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科や専門医にご相談ください。